Report レポート

2017.05.20 みかん蜜の採蜜レポート

毎年島のおいしい蜂蜜を提供してくださる養蜂家の福田さんご夫妻から、父の農園でも採蜜をさせてほしいとご依頼があり、昨年帰省した際にご夫妻と父と一緒に巣箱を設置する農園を下見に廻りました。数ある候補地の中で道路から少し入って奥まったところにある某所は、父の営む自然農法の柑橘畑以外は耕作放棄地が広がっているため、他の農薬の影響がなく(農薬の害を受けた蜜蜂は弱って死んでしまうそうなので、福田さんが有機の圃場に拘る理由はそこにあるようです)、また種々のお花や樹木が多く生息する自然の宝庫。採蜜するにはとてもよい条件が揃っていましたので、即決定!そして採蜜が始まる今年の3月末に、ご夫妻がそちらの畑に巣箱を設置したとの連絡があり、採蜜の見学のお誘いがありました。

ちなみに、この畑で4月に採れた百花蜜は、大変美味な味わいとなる「サクラ」が加わり、少し変わった黄緑色を付ける「アザミ」、「菜の花」、「野いちご」、「野バラ」、「ヤマフジ」等が入った、ご夫妻が満足のいく蜂蜜となったようです。

というわけで、今年5月みかんの花が咲くころ、採蜜のお手伝いをしに帰省してきました。この時期の島は、白く小さいみかんの花が咲き乱れ、お花から放たれる芳しいネロリのアロマが島中を漂い、なんとも幸せな気分にさせてくれます♡さて採蜜初体験、わくわく好奇心いっぱい♪

巣箱から巣板を取り出す

巣箱から巣板を取り出す
早朝の方が濃い密度の蜂蜜が採れるとのこと、早起きして朝6時作業開始。暑いですが、蜜蜂に刺されないようにしっかり防護服を装着。この畑には二段式の巣箱を9つ設置。各段に巣板が9枚入っていて、上段だけ取り出して採蜜します。先ずはじめに作業しやすいように巣門に煙を吹きかけ、蜜蜂を払います。上蓋を外して巣板を取り、巣門の近くにブラシを使って蜜蜂を振り払います。私の帰省のタイミングに合わせて採蜜を遅らせていただいたのですが、開けてみてビックリ!!通常の巣板に溜まる倍ほどの蜂蜜が溜まっていました!!これは養蜂家さんはじまって以来の大量だそうで・・・蜂蜜を溜める巣板が足りないと、巣板の別枠に溜めはじめてしまいます(ムダ巣)。そして、蜜蜂が増えすぎるとお家が足りなくなってしまうので、女王蜂は溜めた蜂蜜ごと移動してしまい(分峰)、そうなると養蜂としては致命的な痛手を被ることになるとのこと。一番気をつけねばならないことだそうです。という訳で、お家を三段にすることにしました。さて、蜜蜂に刺されることもなく巣板の取り出し作業は終了し、ほっとひと安心。巣板をトラックに積み込み、工場に移動しいよいよ蜂蜜を絞ります。

巣板の蜜蓋をナイフで削き落とす

巣板の蜜蓋をナイフで削き落とす
巣板に溜まった蜂蜜の糖度が上がると蓋(蜜蓋)をするのですが、それは非加熱であるの証拠とのこと。広大な敷地で大量に工場生産されている蜂蜜は、従業員の勤務時間に合わせて採蜜を午後からにしているため、蜜の濃度が薄いので蜜蓋がなく、また蜂蜜の規定を満たすために加熱処理して濃度を上げるのだそう。しかし、蜂蜜を60度以上に加熱してしまうと蜂蜜の持っている酵素がなくなって水飴のような状態になってしまい、蜂蜜本来の栄養や美味しさ失われます。朝採れの蜜はその点、加熱しないでも充分に濃さがあるので、加熱の必要はないというわけです。俗に「完熟蜂蜜」と呼ばれますが、父の柑橘もなるべく木で完熟させてから収穫するので、福田さんの養蜂と共通点があります。自然のサイクルで育まれる食べ物は、やはり栄養価や美味しさが違います。

しかしながら、この蜜蓋を取り除く工程は効率が悪く、また蜂蜜のロスを防ぐためにも蜜蓋の出来始めに取り出すのがベストだそう。オスの幼虫(ゆうぼう)は分離器をかけた後に取り除きます。ダニ駆除剤等の薬を使わないポリシーの福田さん。ダニなどのウイルスが付いて病気を防ぐためにも、ここでしっかり始末しておきます。ちょっと気持ち悪くて可哀想であるけれども・・・

分離器にかける

分離器にかける
巣板9枚かけの手動式。周りに蜜が飛び散って下に蜂蜜が溜まっていきます。巣板によって濃度が濃いのと薄いとバラツキがあるので、3~4箱くらいのを溜めてブレンド。濃いのが良いという訳でもないそうで、糖度が上がり過ぎると香りが薄まり、粘土も上がるため、さらっと感がなくなるので、バランスを見ながら調節。

濾す

濾す
蜂蜜をネットに通して一旦粗く漉し、一斗缶(24キロ)詰めて保存。この状態で保存しておきます。瓶づめする際は、これをさらに細かいフィルターにかけて濾して瓶詰めしていきます。

これで一連の採蜜の作業は終了。最後に畑へ巣箱を返しに再び畑へ。蜜蜂の多いところは、さらにもう一段増やしておきました。みかんの花の咲く間、あと何回かは採蜜しに来られるとのこと。みかんが終わると、ハゼ、アカメガシア、マサキの蜜の順に8月の夏の盛りが終わるころまで、採蜜が続きます。これからしばらく暑い中のお仕事になりますが、お身体に気を付けて頑張ってほしいと願います。
最後に特筆すべきこと。近代養蜂では、抗生物質を餌に混ぜて投与する養蜂家が増えてきているそうですが、福田さんは抗生物質を全く使いません。元来、高い抗菌力と抗酸化力、殺菌力のある蜂蜜ですが、抗生物質などを使用する現代養蜂の蜂蜜では、その力が弱まっています。その点、福田さんは自然の状態で蜜蜂を育てるため、栄養価は抜群!また、蜂蜜は純度が高いので日持ちするのですが、天然の蜂蜜は寒いと結晶化してしまうため、冬になるとどうしても固まってしまい、瓶詰めするにはなるべく酵素を壊さないよう60度以下に温めて作業するそうですが、福田さんは、毎年新蜜のみを提供してくださります。採れたての旬の蜂蜜を味わえるのは本当に貴重なことなのです。 蜜蜂が1シーズンの仕事終えた夏の終わりには、次回に向けて愛媛県内にある緑豊かな避暑地の久万高原町へ子作りのためにバカンスに連れて行くそう。そういうところでも蜜蜂に対する愛情が伺えますね。

定年退職して後、養蜂家として第二の人生をスタートしたご夫妻。体力の要る重労働のお仕事ですが、とってもお元気!その秘訣は、毎日ご自身が採蜜した蜂蜜を食べているおかげだそう。今年17歳となる愛犬も一時は歳で弱ってしまったそうですが、なんと蜂蜜を食べさせて復活したそうです!私も毎日の食卓に蜂蜜を取り入れて元気ハツラツでいたいと思います。なお各種蜂蜜は順次入荷いたしますので、楽しみにお待ち下さいませ♪